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NASA衝突実験で小惑星が変形か、国際チーム解析

スイスのベルン大学などの研究チームは、米航空宇宙局(NASA)が2022年に実施した探査機を衝突させる実験で、小惑星が大きく変形した可能性をコンピューターシミュレーション(模擬計算)で示した。この小惑星がもろく、より大きな小惑星から出てきたがれきの集まりであることを示唆し、形成過程の理解につながると期待される。

研究成果は英科学誌ネイチャーアストロノミーに掲載された。NASAの実験は小惑星「ディモルフォス」に探査機「DART(ダート)」をぶつけた。小惑星衝突から地球を守る「プラネタリーディフェンス(地球防衛)」の手段として探査機の有用性を確かめた。天体の軌道を人為的に変更するのは世界初の試みだった。

ディモルフォスは、より大きな小惑星「ディディモス」の周りを回る。従来の観測では、探査機衝突でディモルフォスから噴出物が生じ、周回時間が従来の11時間55分から約33分短くなったことがわかっていた。

研究チームは観測結果に合わせてシミュレーションを実施した。その結果、ディモルフォスの形状が大きく変わった可能性が高いことが分かった。ディモルフォスがディディモスから放出されたがれきが再集積し、形成されたことも示した。ディモルフォスを構成するがれきがくっついている力は、探査機「はやぶさ2」が到着した小惑星「リュウグウ」と同じく弱かった。

ディモルフォスとディディモスを巡っては、欧州宇宙機関(ESA)が実施する探査計画「Hera(ヘラ)」で、24年に探査機を打ち上げ、26年に調査を実施する。地球防衛の知見の獲得や、小惑星の形成過程の解明につなげる。