「いずれこういう日が来るとは思っていましたが、ついに来たかという感じです」

 性風俗業界で働く当事者を支援する団体「SWASH」の元には、最近、オーストラリアのセックスワーカー支援団体から、「日本語で書かれた性感染症予防についての啓発資料を送ってほしい」という依頼があった。オーストラリアで日本人セックスワーカーが増えていることを背景に、「日本人セックスワーカーに配布したいから」というのが理由だという。

「海外で働く日本人セックスワーカー向けの情報が必要になる時代が来るなんて、10年前には思ってもみませんでした。これまで海外では、移民セックスワーカー向けに、困った時の相談先などが書かれたパンフレットが英語、中国語、韓国語、タイ語、ベトナム語などで用意されていましたが、そこに日本語が加わる時代が来たのです」
「SWASH」メンバーの要友紀子さんは、「出稼ぎの動きは、もう止められないと思う」とも口にする。

「日本があまりに貧しく、稼げない国になってしまった。日本で1年で稼ぐ額が、下手すると1カ月で稼げるとなれば、行く人が出てくるのは当然だと思います。海外に出稼ぎに行く動きは、今後ますます広がっていくと見ています」(要さん)

 性風俗業の女性が海外に出稼ぎに行く動きは、日本特有の業界的な問題をはらんでいると見る向きもある。「日本の性風俗業界が今のままである限り、海外に出稼ぎに行こうとする動きは加速するでしょう」と話すのは、性風俗業界の動きについて詳しい中村淳彦さんだ。中村さんいわく、AV業界では10年ほど前から、中国の富裕層を相手に、プロダクションが女優を売春させる動きが出てきているという。

「日本人女性の“市場評価”は世界的に見ても高い一方で、日本の性風俗業界では、男性が女性を安く買い叩いている現状がある。これまで日本では、男性が作った売買春のシステムの中で働く女性が多かったのが、SNSなどの普及によって、従来のシステムに則らずとも仕事ができる時代になった。となれば、個人でしがらみがなく働きたいと考えたり、より稼げる相手に目が向くのは、ある種必然とも言える流れではないでしょうか」(中村さん)

https://news.yahoo.co.jp/articles/a099900ab7b30500930b1b13f618d383358e373f