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どんなに努力しても病気リスクはゼロにならない…では、どうする?

飲酒をはじめとして、肥満、運動不足、赤肉や加工肉の摂取、喫煙などは大腸がんのリスク因子です。こうしたことを言うと「お酒を飲んでいなくても大腸がんにかかる人はいるではないか」と反論されることがあります。リスク因子のない人は大腸がんになる確率が低くなりますが、ゼロにはなりません。健康に気を使い、節制した生活を送っていても、大腸がんになるときはなります。

 ならば検診をまめに受ければ大丈夫でしょうか。日本で推奨されている大腸がん検診は、40歳以上の人を対象に、2日間かけて便を採取し、血液が混じっていないかを調べる便潜血検査です。大腸がん死亡を減少させる効果が確認されている優れた検診です。ですが、大腸がん死亡はゼロはなりません。大腸がんがあっても誤って陰性という結果が出る偽陰性や、次の検診までのわずかな間に急激に成長するがんのためです。

 便潜血検査には偽陰性がそこそこあります。大腸粘膜を直接観察できる大腸内視鏡(大腸カメラ)ならどうでしょう。国によっては便潜血検査だけでなく、大腸内視鏡も大腸がん検診の選択肢となっています。みなさんお分かりになってきたと思いますが、大腸内視鏡によるがん検診でも大腸がん死亡をゼロにすることはできません。

 ゼロにできないからといって、検診を受けても無駄というわけではありません。多くの研究があって数字もいろいろですが、ざっくり言うと、検診を受けることで大腸がん死亡を半分ぐらいにはできます。半分にしかできないと思う方もいれば、半分にもできると思う方もいるでしょう。いずれにせよ、生活習慣や検診で大腸がんのリスクをゼロにはできません。そこには不確実性があります。

 「それならば、いったいどうすればいいんですか?」と疑問に思われる方もいるでしょう。大腸がんのリスクをゼロにしたいのであれば、どうしようもありません。大腸がんにかかることがきわめて高い遺伝病の患者さんに対して、予防的に大腸を全部、外科的に切除してしまうこともありますが、ほとんどの人にとっては現実的ではありません。

 そもそも、大腸がんのリスクをゼロにすることを目指さない方がよいです。そのような方法はありませんし、「あんなに我慢して節制したのに」という深い後悔や、「リスクがゼロにならないのなら無駄だ」といった極端な考え方に陥りやすくなります。リスクはゼロにならないことを受け入れましょう。言い換えれば不確実性に寛容になりましょう。その上で、可能な範囲内でリスクを減らすよう努めることをおすすめします。