中国全人代で突き付けられた「戦略的軽視」。なぜ日本は取り残されるのか

>王毅外相の記者会見で史上初めて日本メディアに質問機会無し

>全人代中に発表されたビザ免除対象国にまたしても含まれず

 私たちの目の前で起こった上記二つの実例は何を意味しているのか。

 端的に言えば、日本に対する「戦略的軽視」だと私は分析しています。

 流ちょうな日本語を話し、ジャパンスクール出身者として外交官人生を全うし、駐日大使まで務めた王毅氏は、日本とどう対するかという点に関しては、昨今の中国共産党指導部の中で最も鋭い感度を持っている人物と言っても過言ではありません。

 そんな王毅氏に突き付けられた日本軽視。

 日本の官民が昨年来幾度となく求めてきた短期渡航のビザ免除が再開されない現実も、中国政府の日本軽視を如実に表しています。

 では、なぜ「軽視」に対して「戦略的」という形容動詞を付けたのか。

 中国側は自らの目的があって、意図的に「日本外し」を行っているからです。その目的とは、究極的には、日本政府の言動や政策、特に米国に同調する形で行った中国への半導体輸出規制、台湾問題を巡る米国・台湾寄りの姿勢や言動に不満を持っていると考えられます。

 これらの日本政府による政策や言動を変えるためには、財界や邦人に不満を募らせ、若干極端な言い方になりますが、日本の民間を「人質」に取ることで、中国政府としての政治的、外交的目的を達成しようとしているのでしょう。言うまでもなく、日本政府が耳を傾ける対象としては、中国政府よりも日本の財界や民間であることに疑いありませんから。

 日本の政府や企業は、中国側のこうした意図を十分に認識しながら、中国との付き合い方を考え、組み立てていく必要があると思います。今回の全人代でますます明らかになった中国の戦略的軽視に、日本の官民としてどう立ち向かうか。日本の国益を左右し得る巨大なテーマだと私は考えています。

https://media.rakuten-sec.net/articles/-/44558