マズイことになった。大人しく退散するかと考えていたら、彼女が男に迫った。

人の頭にワインぶっ掛けるような奴にマナーを指摘されるいわれはないと彼女は男に掴みかかった。
彼女は男を思い切り蹴飛ばし、赤ワインが入ったグラスに手をかけた。
しかし、一瞬考えた様子を見せるとグラスを戻し、こちらに踵を返して帰りましょうと言った。

お金を払い、オーナーに謝罪して店を出た。
今日は本当に申し訳ないことをしました。すみませんでした。
と彼女に謝ると
彼女はまた狼狽した様子をしていた。
これはいかんと土下座をしようと思ったその時、彼女は
ワインがドレスに染み付いちゃった、レンタルなのに
と言って笑った。
僕も笑ってしまった。
その後、彼女の行きつけの焼き鳥屋で食べて飲んで歓談した。

おわり