世界の終わり コーランに描かれた終末
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コーランによれば、終末の日がいつ来るのか知っているのはアッラーだけで、人間はまったくこれを予期できないため、その日はまったく突然にやってくるといっていい。ユダヤ教・キリスト教においては、世界の終末にはいくつかの前兆があるが、コーランが語る世界の終末には前兆らしきものはほとんどない。ただ1つの例外は、ヤージュージュとマージュージュと呼ばれるものが解き放たれて、崖から駆け下りてきて世界を荒らすとされていることである。ヤージュージュとマージュージュというのは、旧約聖書や『ヨハネの黙示録』の中で終末の直前に世界を混乱させるとされているゴグとマゴグ(P.**参照)のことだが、この2人(あるいは2つの種族)が、どのように世界を荒らすかは、コーランには語られていない。

このため、世界の終末はまったく唐突に訪れる。終末はまず天変地異という形でやってくる。コーランではこの天変地異を天の崩壊と地の崩壊という2つの視点で語っている。アッラーの創った天は7層で、がっしりしており、どこにも裂け目がないとされているが、終末の日にはこの天がぐらぐらと大きく揺れ、ぱっくりと割れて裂けてしまい、壊れ落ちてくるのである。しかし、信仰心のない人間たちは、このときになっても、「あれ、随分と雲が重なっているな」などというだけだという。天体の星々も、このときに命を終える。星たちは輝きを失って地上に落ちてくる。太陽も月も完全に光を失い、暗黒にぐるぐる巻きにされてしまう。

こうした崩壊は大地をも襲う。本来ならば平坦で不動のはずの大地が、ぐらぐらと激しく揺れ、砕かれ、四方八方に裂け、中にあったものをすべて吐き出して空っぽになってしまう。大地を不動のものとするために杭のように打ち立てられていた山々も、ずるずると動きだし、ついに空中を乱れ飛んで、粉々になってしまうのである。こうして、すべての山々が崩壊してしまうので、大地はついにどこまでも平坦なものになってしまう。そして、この結果、海の水が大地に流れ込んで、世界は始まる以前の混沌の状態に戻ってしまうのである。