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国産小豆に先高観 猛暑で収穫減、3割高の見通しも

和菓子に使うあんこの原料となる国産小豆の流通価格に先高観が出ている。今春から流通する2023年産は、猛暑の影響から主産地の北海道での生産が減った。一方で新型コロナウイルス禍で落ち込んでいた贈答品や観光みやげとなる和菓子向けの引き合いは増えている。流通業者からは22年産に比べて最大3割程度の上昇を見込む声もある。

国産の小豆は例年、秋に収穫しその年の末ごろから市場に出回る。23年産については収穫が遅れたこともあり、24年春ごろから流通するとみられる。生産者から複数の専門商社や問屋を経由してあんこ製造会社や和菓子メーカーなどの需要家に供給する流通網が確立している。

北海道の生産者と現在、23年産の仕入れ交渉を進めている専門商社によると「22年産よりも2〜3割高い卸値を提示されている」という。国内で流通する小豆の7割弱が国産とされる。このうち9割を占める北海道産の問屋間の取引価格が流通価格の指標だ。

22年産の現在の東京地区の流通価格は30キログラム当たり1万5500円。生産者からの卸値が上がり、流通でも価格転嫁が進めば、23年産は需要のピークを迎える24年春から夏にかけて2万円前後まで上がる可能性がある。不作だった18年産が取引された19年夏(2万1000円)以来、約5年ぶりの高値水準だ。



農林水産省によると、23年産の北海道の作付面積は2万800ヘクタールと22年産に比べて1割増えた。ただ北海道での記録的な猛暑といった天候不順によって、小豆を宿すさやの数が減るなど単位面積当たりの収穫量が減った。

ホクレン農業協同組合連合会(札幌市)の担当者は「色が黒かったり粒が小さすぎたりして商品化できない小豆も多く作況はよくない。市場への流通量も減る可能性が高い」と話す。

一方、コロナ禍で低迷していた小豆の需要は回復している。ビジネスや私的な場で人との面会の頻度が増え、手土産で和菓子を買い求めるようになってきた。

旅行需要の回復や、訪日外国人客の増加で観光地の土産物としての菓子の販売も戻ってきた。人気の銘菓ほどブランド力を維持するため、品質が安定し輸入品に比べて風味が高いとされる国産小豆のあんこを使う傾向がある。

小豆の用途も広がっている。和菓子だけでなくコーヒーなどに合う洋菓子の食材としてあんこが注目を集めているためだ。

カフェチェーン「スターバックス」の国内店舗ではバターとともにバゲットで挟んだ「あんバターサンド」が人気だ。バターの塩味があんこの甘さを引き立てる。生クリームやバターなど乳製品との相性の良さからシュークリームなどの具材にもあんこを使った商品が広がっている。


あんバターサンドなど小豆を使った商品は増えている
コロナ禍では低調な需要が小豆相場の重荷となった側面もある。今後は供給減に加え、需要の高まりも相場を押し上げそうだ。

小豆をあんこに加工して和菓子店やパン店などに供給する的場製餡所(東京・台東)の的場茂社長によると「取引先からはコストを抑えるためにカナダ産など割安な輸入小豆を使ったあんこを求められるケースも増えている」と話す。

運送費や光熱費などが上昇する中、小規模な和菓子店などではさらなる原料価格の上昇を受け入れる余力は少ない。カナダ産や中国産の小豆が市場で存在感を増していく可能性もある。
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