>高校時代は苦しかった。入学式で卑わいな言葉を口にし、周りから避けられた。「うんこ」と言ってしまいそうになると、直前に「ふんが」と言い換えてごまかした。「ふんが先輩」とあだ名が付いた。上級生や下級生からもそう呼ばれるようになった。症状をまねされるのも苦痛だった。

>共に病気と向き合ってきた家族でさえ、理解が追いつかず、症状を巡って言い合いになったこともあった。仕事を終えて帰宅した父親の横で、息子が言葉にならないような声を発し、体を動かしていた。家族で食卓を囲んだ時、我慢できずに「それ、なんとかならないのか」と声を荒らげた。病気だとわかっていても、感情を抑えられなかった。「しょうがないだろ」と反論する息子から、やり場のない怒りと悲しみが伝わってきた。「この病気がなかったら、この子にはどんな将来が待っていたんだろう。なんでうちの子なんだ」。父親はいまも、現実を受け止めきれずにいる。


可哀想