門倉貴史
エコノミスト/経済評論家

今春闘の賃上げ率は33年ぶりの高さとなったが、「来年以降に、物価上昇を上回る賃上げが必ず定着する」保証はどこにもない。

 本来、賃金はビジネスパーソンの労働生産性に応じて決まってくるものであり、政府の賃上げ要請や賃上げ促進税制の強化だけで賃金が上がり続けることは不可能だ。

 物価上昇分を除いた実質賃金が増加して、それが消費の拡大につながり、国内の需給バランスが改善して物価が上昇していくという「賃金と物価の好循環」の実現にはなお相当の時間を要するとみられる。

「来年以降に、物価上昇を上回る賃上げが必ず定着する」と表明するのであれば、どのような方法で実現させるのか具体的な政策まで言及しなければ、無責任のそしりは免れないだろう。