https://news.yahoo.co.jp/articles/b02266bc1b1aae9ed9b533e50e0fbe284fb488b9

地震大国・日本になぜこんなに原発があるのか? 「原子力ムラ」の醜悪な実態を暴く衝撃の一冊!

日本には、議論が常に二極化してしまうイシューがいくつか存在する。賛成と反対を叫ぶ声の激しさがサイレントマジョリティを慄(おのの)かせ、問題の本質から遠ざけてしまう。原子力発電の是非は、その最たるものだろう。

原発について考えること、ましてやそれについて語ることは難しい――そんな思い込みに「難しいと思い込まされているだけ」と異を唱える人がいる。『なぜ日本は原発を止められないのか?』を上梓(じょうし)した青木美希さんはこう語る
青木 これは1995年に福井県敦賀(つるが)市の高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故が起きた際に、報道対応担当をしていた友人から聞いた話です。

友人は原子炉製造に携わるメーカーに勤めていて、文部省(現・文部科学省)の腕章をつけて説明をする立場になった。友人が説明資料を作って文部省の担当者に見せたところ、「この資料はわかりやすすぎるからダメだ。もっと難しくしてくれ」と言われたそうです。

つまり、普通の人が踏み込めない領域にするために、あえて複雑で面妖な説明がされているそうです。世に言う「原子力ムラ」とは、そういう世界なんです。

――この本は日本の原発をめぐる問題の現在を描くだけではなく、GHQの統治下で原子力研究が禁止された被爆国が、わずか四半世紀で原発の営業運転を行なうに至った歴史にも、かなりページを割かれています。

青木 「今起こっていることは、過去にあったことに似ていませんか?」と問いかけたかったんです。東京電力福島第一原発事故の前も、「原発を稼働させないと日本の電力は賄えない」「原発は最もクリーンで低コストの発電だ」と強く主張されていました。

それらは日本の原子力政策が転換するときに打ち出された「日本は資源の乏しい島国だ」「原発の発電コストは小さく、しかも世界で最も厳しい安全基準の下で運転される」といった言説と、ほとんど同じです。同じ失敗を繰り返しつつあることを示すために、原発の歴史をたどる必要があると考えました。

――安全対策は不十分で、コストも決して小さくない、と?

青木 福島第一原発の事故対応に当たった方に、がんや白血病、悪性リンパ腫で労災申請が認められた人が11人おり、ほかにも複数の発症者がいると聞いていることからも、原発の危険性は明白です。