東京・池袋で2019年に起きた車の暴走事故で妻子を亡くした松永拓也さん(37)に危害を加える電話を警視庁本部にかけたとして、無職の男(62)=鳥取市=が今年3月、脅迫容疑で警視庁に逮捕された。SNSや電話による松永さんへの匿名の攻撃は繰り返されてきた。事故からまもなく5年。松永さんは妻子を突然失ったうえ、間違った前提による攻撃で二重に苦しめられている。

 「殺しに行く」。警視庁本部に昨年10月28日、暴力団組員を名乗る男の声でこんな匿名の電話があった。松永さんによると、男は電話で「歳(とし)のいった受刑者に金を払わせるのはおかしい」と言ったという。

 電話の前日、暴走した車を運転していた男性受刑者(92)に対し、東京地裁が約1億4660万円の損害賠償の支払いを命じる判決を出していた。受刑者は保険に入っており、賠償金は保険会社が支払う。脅迫行為の前提は間違っていた。目白署によると、逮捕された男は松永さんと面識はなく、「脅迫したことは間違いない」と容疑を認めているという。

 この電話以降、松永さんは約1カ月間、仕事をリモートワークに切り替え、外出を必要最小限に抑えて過ごした。徐々に元の生活に戻していったが、狙われているというストレスは絶えなかったという。「逮捕の知らせを受けてひとまず安心したが、正直疲れた。今回の出来事で受けた心の傷はまだ癒えません」

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