「危ないサプリ」の報道は正しいのか?小林製薬の健康被害は、紅麹サプリメントだから起こった問題ではない
4/10(水) 6:02配信


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小林製薬のサプリメント(中央)による健康被害を受け、紅麴を含む製品の自主回収は必要なのか?(Hendra Su/gettyimages・小林製薬ホームページより)

 小林製薬の紅麹を使ったサプリメントを巡る健康被害問題はさまざまな食品に影響を与えている。中でも機能性表示食品やサプリメント、紅麹を使った加工食品に厳しい目が向けられている。実際はどうなのか、検証する。

トクホなら起きなかった?
 機能性表示食品は、トクホ(特定保健用食品)と同様に食品に健康効果を表示できる制度で、2015年4月から始まった。トクホが安全性や有効性について国の審査があるのに対し、機能性表示食品は企業が科学的根拠を示せば届け出のみで健康効果が表示できる。

 このためか、今回の事案をめぐって、「国のお墨付きがあるトクホなら防げたはず」と指摘する声は多い。自見英子消費者相も3月29日、「まずは制度の検証をやることが大切だ」と機能性表示食品制度の見直しにも言及した。

 実は筆者自身、小林製薬の最初の会見を見たとき、「健康被害は機能性表示食品だから起きたのでは」と思ってしまった。機能性表示食品がアベノミクスの規制改革で生まれ、トクホに比べて申請の基準が緩いというイメージがあったためだ。しかし、食の安全に詳しい唐木英明・東京大学名誉教授は「小林製薬の健康被害は機能性表示食品だから起きたわけではない。因果関係はまだ不明だが、健康被害はサプリメントに異物(プベルル酸などの想定していない成分)が混入したことによる。異物混入はすべての食品で起きる可能性がある」と指摘する。

 トクホが安全性の審査をしているといっても、製造時の異物混入について国が毎回審査をするわけではない。そう考えれば、機能性表示食品だけをことさら問題視するのは、同食品への風評被害に加担することになりかねない。

サプリメントが危険なのか?
 同様に、健康被害はサプリメントゆえに起きたわけではないが、週刊文春は4月11日号でさっそく今回の事案にからめて「危ないサプリ」と題した特集を組んでいた。

 これも打ち明けるが、筆者も当初、今回のように多くの人が健康被害となったのはサプリメントゆえと思っていた。特定の成分を濃縮させたサプリは、野菜や肉など通常の食品よりも容易に多量を摂ってしまいやすく、食品安全委員会も注意を呼び掛けていたからだ。ただ、このサプリの摂取者に健康被害が多いのは、問題となったサプリを多くの人が摂取したことによるものだ。

 昨年9月に青森県八戸市の駅弁を原因とする集団食中毒では500人以上の健康被害が出た。通常の食品でも、たくさんの人が食べていれば健康被害を起こす人が多くなる。サプリだからではない。

 サプリに厳しい目が向けられるのは、日本では比較的新しい食品であることが関係しているかもしれない。特定の成分を濃縮して錠剤・カプセル状にしたサプリメントを健康食品でも使えるようになったのは約20年前。それ以前は錠剤・カプセル形状の製品は「医薬品」に分類され、「食品」として使用することが禁じられていた。食品でもこれらの形状の販売が可能になったのは2001年に保健機能食品制度が発足してからで、背景には米国からの市場開放の圧力があった。

 「規制緩和」「米国の圧力」と聞けば、それに原因があると考えたくなる気持ちは分からなくはない。しかし、小林製薬の健康被害は異物混入が原因だ。そして食品への異物混入はサプリメントだけでなくさまざまな食品で起きている。

 例えば、腸管出血性大腸菌やノロウイルス、アニサキスなども本来混入してはいけない〝異物〟で、肉や野菜など通常の食品に混入して食中毒を引き起こしている。そう考えれば、サプリメントだけをことさら危険視するのは問題だろう。

 健康被害が起きる異物混入を防ぐなど、食品の安全を守るために、21年施行の食品衛生法改正でHACCP(危害要因分析重要管理点)が導入された。すべての食品事業者にHACCPに沿った衛生管理の実施が求められている。

 小林製薬もHACCPに添ってサプリメントの製造をしていた。にもかかわらず、混入が起きた。これについては、後半にある唐木名誉教授のインタビューを参照してほしい。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e794f05d7ebd0c7b0307c015663d212953040050?page=1