山手線の出入り口ドア上部にある「ドア上モニタ―」に、お笑い芸人、チョコレートプラネットの二人が、スローモーション風の演技で対決する、という短い動画が映っていた。電流が流れるビリビリペンのノックを押してびっくりした様子を、あたかもスローモーションのように演じ、どちらがそれらしく見えるかを競うという内容だ。チョコプラの二人には申し訳ないが、はっきり言って死ぬほどつまらなかった。いいかげんうんざりして遠ざけていたテレビの「お笑い」が、電車の中まで追いかけてきた感じだ。
 嫌なら見なければいい、と言われればそれまでだが、短時間とはいえ、ある種軟禁状態にある電車の中。どうしても動くものに目が行ってしまう。それより、ドアの窓に貼られた奇抜なコスプレでおなじみの大学受験予備校「みすず学苑」の「ドアステッカー」のほうが1000倍面白かった。よくよく見ると、モデルは、やはりお笑い芸人の椿鬼奴だ。しかし、ステッカーぐらいならまだ許せる。ちょっと褒めすぎかもしれないが、微妙にうっすら笑っている、モナ・リザのようなアルカイックスマイルがなんとも絶妙。コスプレもよく似合っている。

 チョコプラの動画は変顔バージョンも見たが、やっぱり見ている方が恥ずかしくなるほどつまらなかった。実はこれ、電車の中のモニターを使って放映する「TRAIN TV」の番組の一つ。広告代理店、JR東日本企画の手になるもので、この4月1日に「開局」した。「“今だけ ここだけ 電車だけ”の映像体験」と題し、さまざまな「TVクオリティ」のオリジナル番組を放映するという。画面の総数は、JR東日本の首都圏主要10路線とゆりかもめで、計約5万面。電車に乗っている間のちょっとした隙間時間を狙って、効果的に広告を露出させるための仕組みだ。チョコプラ出演の動画は「サイレントな笑い」をテーマにした「チョコプラEX」というお笑い番組。電車の中なので音が流せない。制約をかかえつつ番組を制作するのは大変だとは思う。いろいろと工夫しなければならない。しかしこれ、一体誰が喜ぶのだろうか。
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