マスク氏のスターリンク、不正利用の制限に着手

イーロン・マスク氏率いる宇宙開発ベンチャー、スペースXは、同社が手掛ける高速インターネットサービス「スターリンク」について、認可されていない国からの利用制限に着手した。

 スーダンやジンバブエ、南アフリカのスターリンクの利用者がここ数日、スペースXからの電子メールで月末までのサービス停止を通告された。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認したメールには、現地当局が認可していない地域でスターリンクを利用することは同社の利用規約に反すると書かれていた。

 加入者が別の国でインターネットサービスを利用できるようにするローミング機能について、利用できるかどうかは「規制当局の認可など、さまざまな要因が条件となる」とも書かれていた。

WSJはスターリンクの闇市場について調査し、ウクライナに侵攻しているロシア軍やスーダンの民兵組織などが現地の規制をかいくぐってスターリンクを利用している実態を数日前に報じていた。

 スペースXの広報担当者はコメント要請に応じなかった。

 スターリンクがサービスを承認していない地域には、インドとアフリカの大部分が含まれる。また、同社が提供する利用可能な地域の公式マップによれば、ロシアと中国でもこのサービスは利用できず、スペースXも両国で許可の申請を行っていない。

 一方、世界中の何千人ものユーザーは、これらの地域の制限を回避する方法を見いだしている。例えば、サービスが許可されている国でスターリンクのキットを購入し、同社のローミング向けパッケージのいずれかに申し込むという手法がある。アラブ首長国連邦(UAE)やモザンビークなどでは、スターリンクのアクティベーションや、公式には利用できない場所へユーザー向けキットの送付を請け負う中間業者も出現している。

 スターリンクは2023年の業績に関する企業プレゼンテーションの中で、旅行中にこのサービスを利用している顧客が30万人余りいると明らかにした。 

 同社は利用者に送付した電子メールで、各地域のローミングプランは 「一時的な旅行や移動の際のものであり、その場所での永続的な使用を目的とはしていない」とした。さらに、スターリンクのローミングを2カ月超続け、端末を注文した国に戻らなかったユーザーに関しては、サービスが制限されることになるとも述べた。 

 WSJはウクライナの最前線で戦うロシア軍兵士やスーダンの準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」によって、スターリンクの端末が使用されていることを確認している。

https://jp.wsj.com/articles/musks-starlink-cracks-down-on-growing-black-market-4f927562