わたしが天才を見つけたとき。新海誠と奈須きのこがまだ若々しい「苗木」だった時代のことを語ろう。
海燕

「お前さんたちは大樹の苗木を見て、それが高くないと笑う愚を犯しているかもしれんのだぞ」。

田中芳樹著『銀河英雄伝説』において歴戦の名将アレクサンドル・ビュコックが、
若くして功績を立てた後輩の〈魔術師〉ヤン・ウェンリーを軽く見る同僚たちに対して述べた警句である。

わたしは新しく出てきた特異な才能がその欠点を批判されているところを見ると、しばしばこの言葉を思い出す。

すでに堂々と育ち切った大樹を見ればだれもがその威容を認める。
しかし、それが苗木のうちからいつか大樹に育つことを見抜くことは容易ではない。
生え出たばかりの苗木を見てその低さを笑う愚は避けたいものだ。

とはいえ、ときにはわたしのような節穴から見ても露骨に将来性抜群に思える才能もあるもので、
わたしも出てきたばかりの作家を一見して「いつか大物になるぞ」と直感し、
舌なめずりして周囲に吹聴してまわることがある。

今回は、そういった異数の才能たちのなかでもわたしの想像を遥かに超えた大樹に育ったふたりの天才が、
まだちいさな苗木に過ぎなかった頃のことを話したい。
https://www.maruhan.co.jp/east/media/new/175/