◆YAH YAH YAH「これからそいつを殴りに行こうか」の相手は秋元康だった

吉田:ASKAさんと秋元さんの間に溝ができた発端は、ふたつぐらいあったと思います。最近、古舘伊知郎さんがそのひとつのネタばらしをしていましたね。フジテレビの音楽番組『MJ-MUSIC JOURNAL』(1992-1994年)で構成担当の秋元さんが「チャゲアスは現代の演歌だ」という企画を流したという。

ASKA:あれは僕たちに対してもそうだけど、演歌の方々に対しても失礼だと思ったんだよ。もともとあの番組への出演をOKしたのはフジテレビの偉い方からお願いされて、「番組に穴が開いてしまったから、この穴を埋めるにはいまチャゲアスしかいないんだ!」と言われたから。
でも、よくよく考えたらおかしいんだよな。穴が開くってどういうことよって。ああいう番組なら出たい人いくらでもいるわけでしょ。そもそも、穴が開いたっていうこと自体が罠だったんじゃないかって。「秋元コノヤロー」と思うよね(笑)。

吉田:古舘さん曰く、そのときASKAさんが相当怒ってたから、その翌年にリリースされた『YAH YAH YAH』の「傷つけられたら牙をむけ」「これからそいつを殴りに行こうか」という歌詞は秋元さんや番組に向けられたものだった、と。これは本当なんですか?

ASKA:ホントホント(笑)。でも、当初はそんなつもりの曲じゃなかったんだよ。『YAH YAH YAH』って言葉とサビだけは決まっていた。全員が手を振り上げているのが見えていて、そこに向かって書き直しているうちにテーマが見えてきた。
そこに、ちょうど別件の打ち合わせで来ていた小田和正さんがレコーディング現場にフラッと来て。「言いたいことがしっかりあるのはいいことだな」って言って出てったのね。その楽曲やメッセージの内容がいい悪いじゃなくて、テーマがきちんとあることを小田さんは感じてくれたんだと思う。

吉田:ドラマ(三谷幸喜『振り返れば奴がいる』1993年)の主題歌になるようなポップソングで、なかなかこの歌詞はありえないですからね。

ASKA:ないよね(笑)

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