乳業準大手の江崎グリコ(大阪市)がシステム障害に伴い、子会社の乳業全4工場で大部分の牛乳・乳製品の製造を停止していることが分かった。同社は受け入れ予定の生乳を他社の工場へ委託加工に回すなど、生乳廃棄がないよう対応を急ぐ。ただ、飲用や発酵乳向けで予定した生乳の多くが、単価の低い脱脂粉乳など加工向けに回ることになり、生産者手取りへの影響も懸念される。

 同社は19日、システム障害で14日からチルド食品の出荷を取りやめていることを発表。5月中旬の出荷再開を目指すとしている。

 同社によると、全4工場で市販用の牛乳やヨーグルト、乳飲料、洋生菓子など、学校給食用牛乳(学乳)を除く牛乳・乳製品の製造も停止している。5月中旬の出荷再開まで約1カ月、製造は停止する見込み。日本乳業協会によると、「品質や安全の問題以外で、これだけ長い間、複数の工場が止まる例は思い当たらない」という。

 今回の事態を受け、同社と配乳する地域の指定生乳生産者団体が緊急に対応を協議。関東生乳販連の管内にある2工場、九州生乳販連の管内の1工場では、契約通りに生乳を仕入れ、同社の判断で管内の他社の工場へ委託加工に回している。

 飲用や発酵乳向けで予定していた多くが、単価の低い脱脂粉乳など加工向けに回ることになる。関東生乳販連は「生産者へ影響が出ないように同社と協議している」と話す。

 関東では最近の生乳需給緩和に加え、学乳が停止する5月の大型連休を控え、脱脂粉乳など加工処理能力が限界を迎える懸念もある。「その場合は管内に18あるクーラーステーションで生乳を多く持ってもらう」(同)と対策を練る。

https://www.agrinews.co.jp/news/index/228716