地域の人間関係に失望した芽衣さんがさらに頭を抱えたのが、地元の花火大会の夜だった。

花火の打ち上げが終わった午後9時。祭りのときのように夫の知り合いに絡まれることもなく、ホッとしながら土手沿いを歩いて家に戻っていると、土手の下から、あるいは木の陰から、なまめかしい声が聞こえてきたのだという。

「みんな若いカップルたちで、何をしているのかはあきらかでした。半裸姿で重なっている姿が道路から丸見えになっている男女までいました」

「なにこれ?」と夫に小声で聞くと、
「見ないフリ! 見ないフリ! こういうのはそっとしておくのがルールなんだよ」と、逆に“大人のマナー”を解説されたという。

「私たち以外にもたくさんの通行人がいたのですが、カップルたちは見られることを気にせずイチャイチャしていました。子供に見せられたものではないので、私は必死に子供たちにいろいろ話しかけて、誤魔化して歩きました」

夫によると、こうした光景は「花火大会にはつきものの風物詩」らしい。

「何でも、この地域は戦後しばらくするまで夜這いの風習が残っていたそうで、その影響で、代々性的にオープンな土地柄なのだそうです。夫の時代も中学生にもなれば、放課後に誰もいない教室でイチャついたり、夜の部室で密会するのは当たり前だったようです。夫が昔を懐かしがりながら『トイレや校庭の隅っこにコンドームが落ちてることも珍しくなかったなぁ』と言ったときには鳥肌が立ちました」

https://gendai.media/articles/-/128252?page=4