徴兵制のイスラエルでは軍への信頼が厚いという事情もある。「自分が軍にいたときは、死んでも国を守ると考えていた。でも今回、軍は国民1200人を守れなかった。これはイスラエル人にとってはとてもやり切れない」。そのため国民の多くが期待するのが、ハマスのガザ地区トップのシンワール指導者殺害だ。「みんな待っている。彼を殺したら『これで私が信じた強い軍に戻った』という気持ちになることができる。彼を殺すまでは一般市民を殺しても仕方がないとみている人は多い」と説明する。

 ▽疑問持たせぬ「洗脳教育」

 こうした考え方の根本にあるのは、イスラエルの「洗脳教育」だと語る。「『アラブ人は怪しい。怖い。信用できない。唯一やりたいことは私たちを殺すことだ』と0歳から刷り込まれる」。そのため今回の奇襲も「長年の抑圧に対しての抵抗ではなく『ハマスはそういう人間だからやった』と考える。イスラエル人が普通に考えることだ」と語ると、昨年10月のカレンダーを持ち出してきた。
 ハマスがイスラエルを奇襲したのは7日。カレンダーでは6日までが黒塗りされている。「イスラエル人にはこう見えている。『イスラエルとパレスチナの歴史は全て10月7日から始まった』という考え方。そこまでの占領は関係ない」

 イスラエルのネタニヤフ首相や軍高官らはハマス戦闘員を「テロリスト」「動物」「怪物」と呼ぶ。これも「洗脳教育」と似た考え方だ。「軍隊は兵士に対し『動物だから殺しても問題ない。こっちは人間。向こうは人間じゃない』という教え方をする」と説明。「私は空軍のパイロットになれなかったが、もしなっていたら絶対ガザに爆弾を落としていたはず。レーダー部隊に配属された私は人を殺すことがなく、幸運だった」

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