これで終わりかと思うと、看護師が下半身にまわり、腰を持ち上げて、私に新しいおしめを敷くように指示しました。Wさんの両脚を割るように開かせ、看護師が肛門に指を入れて、便をかき出しはじめたのです。

言葉を失っていると、看護師が私に指示しました。

「先生。下腹部をぐっと押してください。残っている便をかき出しますから」

えーっと思いながらも、信頼できる看護師の言うことですから、素直に従います。ご遺体の腹部は柔らかく、薄い皮膚を通して腸の感触がわかります。

「まだ残ってます。もっと強く」

「こう?」

「右から左へ、直腸から押し出す感じで」

「これでいい?」

聞きながら必死に押すと、額から汗が滴り落ちました。

全部出し終えてから、陰部をていねいに洗い清め、新しいおしめをつけて、最後は用意された白い死に装束を着せました。
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