オーバーツーリズムどう防ぐ? 鎌倉で「歩き」促す実証実験

観光客の増加で交通渋滞やゴミのポイ捨てなどに悩まされてきた観光地で、観光と地域の暮らしの両立を図る取り組みが芽生え始めた。ゴールデンウイーク(GW)の後半が始まった3日、神奈川県鎌倉市では交通機関を使わず、歩行での周遊を促す実証実験も。観光が地域に負担をかける「オーバーツーリズム」解消に秘策はなく、今後も試行錯誤は続きそうだ。

「徒歩での移動ルートをお配りしています」

強い日差しが差すJR鎌倉駅付近で3日、関東運輸局の職員らが国宝の鎌倉大仏までの地図を示したチラシを観光客らに配っていた。

歩行の促進は、オーバーツーリズム防止策の一環の実証実験。大仏の最寄り駅に電車で向かうため、江ノ島電鉄鎌倉駅に集中する人の流れを分散するとともに、交通渋滞や公共交通機関の混雑を解消する狙いがある。

市内では近年、観光客が増えて通勤・通学に使われる江ノ電鎌倉駅の改札前に数十メートルの列ができることも頻発。人気バスケットボール漫画「スラムダンク」にゆかりのある江ノ電の踏切などにも客が殺到し、ゴミのポイ捨て問題も生じていた。

そこで地元住民や自治体と協議してきた関東運輸局が始めた苦肉の策が「歩行の推進」だった。

関東運輸局によると、大仏などに訪れた後、周辺の店に寄らずに離れる客も多く、歩行推進には周辺に経済効果の裾野を広げる狙いもある。

とはいえ、鎌倉駅から徒歩で30分の大仏も最寄りの長谷駅からは徒歩7分。兵庫県加古川市から来た石井玲名さん(18)は「30分はきつい。写真が撮れるスポットが沢山あるなら…」とし、この日は近場の散策で済ませると話した。

関東運輸局の担当者は「これをすればオーバーツーリズムが解決するという策はない」と話し、「観光客にも地元住民にも住みよく楽しい地域となるよう知恵を絞っていきたい」としている。

https://www.sankei.com/article/20240503-E7USEMFMNJIIZHBHOW3ROG5H7M/