──いま、違和感をおぼえることはありますか。

【出崎】『CLANNAD』をやっているときに、この子(ヒロイン)なんで死ぬの? って訊いたんです。
そうしたら「ゲーム上死なないとね、泣けないんですよ」って答えられた。
一見シリアスなんだけどさ、オレから見るとちゃんとした根っこがないんだよね。
現象としてそういうのをやれば客は泣く、それがわかっているだけで。
だから映画にするときは、どうして死ぬのか、少なくとも心の流れだけはきちんと作っていこう、と。
で、その死に対して、ちゃんとそれを感じる人間を登場させようとした。
それは当たり前。当たり前のドラマを作っただけなんです。
「ここで死なないとゲームとしてマズイんですよね」。それは、視聴率だけよければいいや、というのと似ている。
「とりあえず殺せば泣くんだよね」というのは、人間を甘く見ている。
甘く見ているし、でもそれで通用する部分があるっていう世の中はなんかヘンだよね。とってもヘンだよね。

でざき・おさむ
1943年11月18日生、東京都出身。アニメ監督、脚本家、演出家。
63年に虫プロダクション入社。以降、『あしたのジョー』『エースをねらえ!』『ベルサイユのばら』『元祖天才バカボン』『ガンバの冒険』など数多くの名作を手がけ、日本アニメ界の第一人者となる。
「止め絵」や「繰り返しショット」など出崎によって生み出された独特の演出法は、アニメ演出の分野に今なお多大な影響を与え続けている。

https://www.cyzo.com/2009/01/post_1343_entry.html