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「子どもの貧困率」はなぜ下がっているのか?
-統計的要因分析-


本稿では、子どもの貧困率の直近の動向を整理すると共に、貧困率低下の背景を統計データから探った。子ど
もの貧困率は 2012 年の 16.3%から 2021 年の 11.5%にかけ 4.8%pt と大きく低下したが、その背景は以下のよう
にまとめることができる。
第一に、子どもの貧困率低下の主要因は稼働所得の増加であり、特に所得の低い層の賃金が緩やかに上昇して
いることと、共働き世帯や共働き正規職員世帯が増加したことが寄与している。新型コロナ対策に伴う給付金の
増加なども貧困率改善に一部寄与していると考えられるが、その影響は限定的である。


第二に、2019 年から 2021 年にかけての変化を分析すると、大人 2 人以上世帯の貧困率が大きく低下している
のに対して、大人 1 人世帯の貧困率の低下は限定的である。図表 7 はひとり親世帯(大人が1人の世帯)につい
て子どもの等価可処分所得の変化を図示したものである。図を見ると、貧困線よりも少し下の層は大きく減少し
ており、140 万円以上の層が増加している。しかしながら等価可処分所得 100 万円以下の層は 2018 年から 2021
年にかけてかえって増加してしまっている。前述の通り、子どものいる世帯全体で見ると、共働きや賃金水準の
上昇によって稼働所得が増加しており、それが子どもの貧困率を引き下げる方向で働いている。しかしながらひ
とり親世帯は働き手を増やすことが難しいため、こうした効果が働きにくくなっていることが懸念される。