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つづき
クラシック音楽の大家、ベートーベンの髪の毛から高レベルの鉛が検出され、本人が鉛中毒にかかっていたとみられることが新たな研究で分かった。難聴を含め、ベートーベンが人生の中で苦しんだ病気の原因になった可能性があるという。

聴覚の喪失以外にも、ベートーベンは生涯を通じて胃腸の病気に悩まされ、黄疸(おうだん)や重い肝臓病も患った。

ベートーベンは肝臓と腎臓の疾患により56歳で亡くなったとされる。しかしこれらの数多い健康問題の原因を把握するのは極めて困難な作業であり、ベートーベン自身もいつか医師の手でそれを解明してほしいと望んでいた。

(中略)

研究者らはより若い時期のベートーベンの毛髪サンプルを入手していないため、いつ鉛中毒が始まったのかは把握できていない。ただリファイ氏によれば、ベートーベンは生涯を通じて鉛中毒の兆候を経験している。そこには聴力の喪失、筋肉の痙攣(けいれん)、腎臓の異常などが含まれるという。

それにしてもベートーベンはどのようにしてこれほどの鉛、さらにはヒ素や水銀を体内に取り込むに至ったのだろうか。こうした物質は数十年にわたって食物や飲料の摂取を通して蓄積された公算が大きいと、リファイ氏は指摘する。

ベートーベンはワイン好きで知られ、時には1日でボトル1本を空けることもあった。また鉛入りのワインも飲んでいた。リファイ氏によるとワインに甘味料、保存料として酢酸鉛を加える習慣は少なくとも2000年前から存在した。鉛はまた、ガラス製品の透明度を高めるために製造工程で使用されてもいた。

ベートーベンは大の魚好きでもあった。当時ドナウ川は産業の源で廃棄物が流れ込んでいたが、その同じ川で捕れた魚が消費に回っていた。魚にはヒ素や水銀が含まれていた公算が大きいとリファイ氏は述べた。

鉛中毒は、ベートーベンの肝疾患を引き起こした四つ目の要因のようだ。前出のメレディス氏はこの他に遺伝的要因、 B型肝炎感染症、アルコール好きの傾向を挙げている。

(おわり)