でも時価総額はカプコン・コナミの半分……一体どこで差がついた?
では、スクウェア・エニックスの業績や時価総額はどうか。同社の売上高は約3600億円に達すると予測されている。『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』など国際的に成功しているIPを通じて、グローバル市場へ攻めていく姿勢もうかがえる。
また、営業利益は550億円と、前期の443億円から20%程度増加するとみられており、増益基調に転じている。しかしコロナ禍で巣ごもり需要が活発化した2021年度の業績に比べると、売り上げ、利益ともに超えられていない。足元の増収も、円安の影響を除外すると実質的な業績の成長はそれほどでない可能性もある。
そんなスクウェア・エニックスの時価総額は約6500億円だ(5月14日時点)。カプコンの約1兆4600億円(同)やコナミの約1兆5500億円(同)に比べると半分ほどしかない。この差はどこにあるのか。
カプコンやコナミは有力IPの強さを維持している。カプコンは『バイオハザード』『モンスターハンター』などで海外展開に成功し、コナミの『遊戯王 マスターデュエル』は複雑なルールをゲーム上で表現するイノベーションがあった。
カプコンの時価総額増加の背景には、海外市場での強力なプロモーションと、単なる焼き直しではなく、著名タイトルの本格的なリメーク作品を連続で成功させた点がある。現在同社の海外売上高比率は60%と、国内を上回る。円安による業績への恩恵も非常に大きく、カプコンのビジネスモデルは今や、無形のコンテンツを輸出する産業そのものだといえる。
スクエニは「守り」に入っている?
カプコンやコナミが2020年以降に株価を大きく伸ばしてきたのに対して、スクウェア・エニックスの株価は依然として横ばいだ。スマホの移動系ゲームアプリ『ドラクエウォーク』や、建築系ゲームの『ドラゴンクエストビルダーズ』など、挑戦的なタイトルもあるが、いずれも『ポケモンGO』や『マインクラフト』の二番煎(せん)じ的な印象も強く、同社固有のイノベーションと言いがたい。「守りに入っている」と思うユーザーもいるだろう。
スクウェア・エニックスがさらなる成功を収めるには、プレーヤーの期待に応えるためのイノベーションとコンテンツ設計の見直しが必要だ。同社の時価総額の成長率が、カプコンやコナミより劣っている主な理由は、経営戦略における攻めの姿勢の有無と、海外市場における成功度合いの差にある。
スクウェア・エニックスがこれらの課題をどのように乗り越えていくかが、今後の同社の位置付けを左右するはずだ。引き続き注目したい。
