殺伐とする日本人の現場

「日本人のベテラン作業員たちは、昭和のノリが残る平成時代に修行した連中が多く、親方や先輩から殴られたり怒鳴られたりして育ったもんです。自分も平成に修行しましたから当てはまるかもしれませんが、根性はあっても性格がひん曲がっていたり、キツい修行を乗り切ったというプライドだけがやたら高かったり、というタイプが目立つんですよ。厳しい修行を逃げ回って生き残った奴もいるから、口で言うほど腕はよくないという奴も結構います。そんな連中だけで現場をやると、もうホント、いびつすぎて殺伐としますよ。脚立ひとつ建てるだけでも『そこ邪魔だ』とか言われそうでね」

 現場が殺伐とすれば、日本人の若い作業員がどんどん辞めていく。もちろん、彼らが貴重な人材であることは言うまでもない。

「日本人の若手に根性がないんじゃないんです。誰だって職場環境が悪ければ辞めますよ。ところが、クルド人の作業員は和気あいあいとしてます。クルド人の古株連中だって昭和のノリで修行をさせられたと思うんです。ところが元々持っている文化が違うからなんでしょうか、日本の作業員みたいに、くだらないイジメや、つまらない駆け引きとか、見栄の張り合いなんてことは一切しない。真っ直ぐに仕事と向き合ってくれますよ。」