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安倍氏は、本当に手強(てごわ)い論客だった。確固とした政策論、哲学があった。迂闊(うかつ)な発言には一気呵成(かせい)、切り込まれる。2012年の党首討論もそうだった。火花が散る、一瞬も油断できない緊張の連続だった。
今の政界を、安倍氏は嘆かわしい思いで見つめているのではないか。
先の国会では、自民党派閥の裏金問題が焦点だった。衆院政治倫理審査会が行われた部屋の壁には、奇(く)しくも、永年勤続記念の安倍氏の肖像画が掲げられ、成り行きを見守っていた。
安倍氏は生前、政治資金パーティー収入をキックバックする慣習の廃絶を指示したという。暗殺事件後、指示は覆されたことになる。岸田文雄首相をはじめ、政倫審に臨んだ方々は、安倍氏の前で、恥ずるところはなかったのか。