莉子さんには当時、こんな記憶がある。寝室でもない部屋に父と凜さんが二人きりでいた。扉から中をのぞくと、布団が敷かれていたという。
凜さんから性暴力被害を告白されたのはそれから間もなく。これまでの不審点が一気に解消された一方で、信じ切れない自分もいた。
「まさか。そんなことあり得るの?」。自分1人で受け止めきれず、母に相談した。すると、伝え聞いた父は即座に否定し、母も、父の言葉を信じてしまったようだった。
凜さんからは後でこう言われた。
「姉に話したんじゃないかとお父さんから怒られた。お母さんに話すと伝わるから相談しないで」
ただ、その後も断続的に被害に遭ったことを凜さんから聞かされた。その言葉を信じて、疑っての繰り返しだった。