政府はこの春に21万tの備蓄米を放出したが、以降も新米が出回るまで毎月放出するという。
これについては、「遅きに失した」というのがマスメディアの論調である。
しかし、1995年に食糧管理制度が廃止されて以降、基本的に米は市場原理に委ねられており、
その結果として現在のような事態が生じていることを認識すべきである。


そもそも、民間在庫があるにも関わらず価格調整のために備蓄米を放出するのは市場原理に反する。
備蓄米を価格調整のために使うのであれば、価格下落の際は買い入れし市場隔離しないと理屈に合わない。

「コメの値段が高い」「いつ値段が下がるのか」と値段ばかりを報道するのではなく、
主食である米の安定供給のためにはどういう議論が必要なのか、核心に切り込むことがメディアの果たす役割ではないだろうか。

「今だけ、金だけ、自分だけ」とは、東大の鈴木宜弘教授が新自由主義者を称して言った言葉。
生産者のことはさておき、今だけ値段が下がりさえすればいいという消費者目線だけではことは解決しない。
そもそも、ごはん1杯いくらなのか分かって「高い」といっているのだろうか。5kg4,000円としたら、1杯は50円、コンビニのサンドイッチは300~350円。
我がJA本所近くのラーメン店では、いまだに「ご飯無料サービス」の看板を掲げている。

1993年、「平成の米騒動」が起こった。あの時は、冷夏で米不足におちいった結果タイ米まで輸入したが、
翌年豊作になったら何事もなかったかのように米の話題は報道されなくなった。

今回も同様に、いったんことが収まれば米の話題はニュースにならないだろう。

https://www.jacom.or.jp/nousei/rensai/2025/04/250424-81240.php


長野県・JA松本ハイランドの田中均代表理事組合長
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