なぜ「ホロコースト犠牲者の国」が、パレスチナ人を迫害するのか? ①

パレスチナの話をすると、必ずされる質問があります。
「ホロコーストでひどい目にあったユダヤ人のつくった国が、なぜパレスチナ人に同じようなことをするのか?」というものです。
迫害されるユダヤ人少女「アンネ・フランク」のイメージと、「ガザ攻撃」で子どもたちを犠牲にする現在のイスラエル政府とがどうしても重ならないということでしょう。
その違和感は間違っていません。

答えは、ホロコーストで犠牲になったユダヤ人と、イスラエルをつくったシオニストとは、別の存在だからです。
問題は、その「ホロコースト犠牲者の国」というイメージをイスラエル政府が外交戦略として徹底的に利用し、自国への批判を封じたり、ドイツなどから多額の補償金を得てきたことにあります。

シオニズム運動によってパレスチナへの移民が始まったのは、ドイツでナチスが台頭する40年近く前のことです。シオニズムのきっかけが、ヨーロッパのユダヤ人迫害事件だったことは述べました。
しかし、「他人の土地に押し入り、自分たちの国をつくる」というシオニズム運動は、当時のヨーロッパで主流だった植民地主義そのものです。
それを進めたシオニストは、当時のユダヤ人社会の中で少数の急進派でした。
「差別はなくならないし、同化することはできない」と信じてパレスチナへの移住を呼びかけた彼らの目には、いつまでもヨーロッパに残ろうとして犠牲になった多数派のユダヤ人の行動は、愚かにさえ映っていたのです。