
「プリンターの設定、俺分からないからやっといて」
自分が会社勤めをしていた頃、ネットやPCに弱い先輩からたびたび言われた、そんな言葉。
上下関係が厳しい社風だったためノーという答えは許されず、心の中ではいつもこう思ってた。
「このオッサンは、中国の物乞いたちの爪の垢を煎じて飲むべきだ」
ハイテク国家中国では、今どきITを駆使できなければ生活上のあらゆるサービスが受けられず、それは物乞いもまた然り。
というか、キャッシュレスが進みすぎて誰も小銭なんて持っていないため、最低限スマホ決済くらい使えないと施しを受けられない。
ゆえに、中国の物乞いはハイテクと縁遠い存在かと思いきや、首からQRコードをぶら下げて「ウィチャットペイでもアリペイでも大丈夫だ!」くらいのことは言ってくる。
それにひきかえ、日本で正社員という恵まれた地位にあり、ヒマも存分に持て余しているあなたが努力をせず、部下に丸投げとは何事かと義憤にも似た怒りを感じていたのである。
会社に守られている前述の先輩に比べ、中国の物乞いにとってアテになるのは他人でも国でもない。
かの国でひとたび路上に放り出されたら、頼りになるのは自分だけだ。
そもそも中国人とは赤の他人にすんなり金を渡すほど、甘い人々では決してない。
ところが、「これは本当に気の毒だ」「こんな人いままで見たことない」といった風に、心に響く何かがあると話は全く違ってくる。
中国の物乞いたちはそれを分かっているからこそ、少しでも多くの施しを受けようとありとあらゆる手を尽くすし、なんならハイテクだって使いこなす。
時には自らが負うハンディキャップを最大限アピールしつつ、一芸まで披露して路上に糧を求めるのである。
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