クールジャパン機構は大丈夫か? 累積損失231億円を抱える惨憺たる状態

「120億円もの累積損失を出し解散することが決まったA-FIVE(農林漁業成長産業化支援機構)の二の舞いにならないか懸念されます」

 金融関係者がこう明かすのは、官民ファンドのクールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)のことだ。

 クールジャパン機構は、日本発の商品・サービスに対する海外需要の開拓支援を目的に2013年11月に設立された。財政投融資から906億円、民間から107億円の資金拠出を受けており、21年3月末までに51件、856億円を投資したが、実績は231億円もの累積損失を抱える惨憺たる状態にある。

 このため19年に投資方針を修正し、それまで海外でクールジャパンを売り込む基本企業だけだった投資先を海外企業にも広げた。しかし、その後も累積損失が拡大したため今年5月に改善計画を策定し、6月には新社長として大和企業投資出身の川ア憲一氏を、専務にA・T・カーニー出身の頼高画也氏を迎えるなど体制整備を図った。

■家賃が高すぎるとも

 だが、「改善計画では23年度の累積損失が298億円にまで拡大するが、ここを底に反転し、機構存続の最終年度にあたる33年度には148億円の累積黒字を確保する見通しになっています。しかし、はたしてそううまくいくのか疑問視する声が絶えません」(先の金融関係者)という。

 というのも、投資の失敗に加えてクールジャパン機構には法外な運営費が費やされているためだ。先の金融関係者によると、「9月28日に内閣府が公表したリポートにも盛り込まれているのですが、20年3月期のクールジャパン機構の職員1人当たりの人件費は1325万円で、1人当たりの家賃は292万円なのです。六本木ヒルズ森タワーに入居しているためです。231億円の累積損失のうち投資による毀損分は約90億円にすぎず、残りは運営費で占められています」というのだ。

 このため安い賃料のビルに移転することも検討されたが、結局、移転費用を勘案すると現オフィスに残り、事務所の使用面積を4割削減する案に落ち着いたという。クールジャパン機構の原資の大半は財政投融資であり、NTTや日本たばこ産業の配当金など国が得ている公的資金にほかならない。果たしてうまく計画通りに最後は黒字で終わることができるのか、はなはだ心もとない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6f0bac5a39e535a2e35140aba126ce7ce3fe6473