
https://courrier.jp/cj/274144/
フランスでは、これから出る最新の「プジョー」や「ルノー」の自動車広告に、むしろ徒歩か自転車を使うよう訴える注意事項が付されることになる。
2022年3月に施行予定の新しい規制で、フランスの自動車メーカーは視聴者により環境に優しい移動手段を選ぶよう促すメッセージを自動車の広告に盛り込むことが義務づけられる。
フランスの官報によれば、自動車メーカーが選べるメッセージは次の3つのどれかになるという。
「相乗りを検討しましょう」
「短距離の移動には徒歩か自転車を選びましょう」
「毎日の移動には公共交通機関を使いましょう」
メッセージ末尾には「#SeDéplacerMoinsPolluer」(#汚染の少ない移動を)というハッシュタグも付けなければならない。
この要件は、ラジオ、テレビ、劇場、インターネット、ビッグスクリーンでの広告にも、印刷広告にも適用される。広告主がこのメッセージを盛り込まなかった場合は、650万円未満の罰金が科される場合もある。
フランスでは同様の規制が食品広告ですでに実施されている。フランスの消費者にジャンクフードを減らし、果物と野菜をもっと食べるよう推奨するメッセージが盛り込まれているのだ。
世界中の国々で、タバコの広告に喫煙がガンや死亡につながるという警告が盛り込まれていることがよくある。フランスでは、そもそもタバコの広告自体が完全に禁止されている。また、全銘柄共通のいわゆる「プレーン・パッケージ」も2016年から義務化が始まった。
自動車広告の禁止を訴えてきた環境保護団体が長年ロビー活動を続けてきたことが、今回のフランスの動きにつながったのだ。
仏紙「ル・モンド」によれば、3月1日以降、自動車メーカーは車両の二酸化炭素排出クラスも宣伝に盛り込まなければならないという。最も排出量の多い車両の広告は、2018年に禁止が開始される予定だ。
フランスのバルバラ・ポンピリ環境相はこの新しい広告規制についてツイッターでこう書いている。
「交通手段の脱炭素化は、電動に切り替えることだけではない。できるだけ公共交通機関や自転車を使うということでもある」
「自動車に汚名を着せる」規制?
欧州環境機構によれば、交通関連の二酸化炭素排出量は、欧州連合の温室効果ガス排出量の4分の1を占めている。
排出量の多い自動車の使用制限は、フランスの気候変動対策で柱のひとつになっている。
2021年夏に可決された気候変動をめぐる重要法案には、ガソリンやその他の化石燃料の広告を廃止する策や、よりクリーンな自動車に切り替えるドライバーに助成金を支給する策も含まれている。
新しい広告規制をめぐる自動車メーカーの反応はさまざまだ。「フォルクスワーゲン」は規制に従うとフランスメディアの取材に応えている。「ヒョンデ」フランス支社も同様だ。
仏ヒョンデ最高責任者のライオネル・フレンチ・キオウは「動向を注視し、われわれは順応する。排出量ゼロの交通手段は未来だ」とAFPの取材に答えている。
だが、キオウは今回の規制が「自動車に汚名を着せる」ものであり、「いささか逆効果」だと不満も漏らしている。政府は電気自動車の使用を奨励しようとしているのに、自動車のタイプを区別していないからだという。
大手のルノー、プジョーブランドを売る「ステランティス」、米自動車メーカー「フォード」にコメントを求めたが、いまのところ応答はない。