アメリカにおける公正な取引を監督・監視する連邦取引委員会(FTC)が、Meta傘下のVR開発ブランド・Oculusが反トラスト法(独占禁止法)に違反しているとして、同ブランドの調査を開始したと報じられています。
Bloombergの報道によると、FTCとニューヨーク州・テネシー州・ノースカロライナ州という3つの州の司法長官が、過去数カ月にわたりOculusプラットフォーム向けにVRアプリを開発しているサードパーティーの開発者に対し、聞き取り調査を進めてきたとのこと。FTCとニューヨーク州が主導するこの調査は、MetaがVR分野での市場支配力をどのように利用し、反競争的慣行を築き上げているかを調べているそうです。
同グループは数人のVRアプリ開発者へ聞き取りを行っており、Metaが展開するVRアプリストアのOculus Questストアが、Metaが独自に開発するアプリと競合するようなアプリを販売するサードパーティーの開発者をどのように差別的に扱っているかを調査している模様。
また、調査グループはOculusブランドのVRヘッドセットの販売価格が競合他社の製品をどのように下回っているかについても調査しているそうです。Metaの主力製品であるOculus Quest 2の販売価格は299ドル(約3万4000円)からで、競合他社のHTCが販売する一部のモデルよりもはるかに安価です。
なお、報道によると調査グループは2021年からOculusの独占禁止法違反について調査を進めているそうです。
今回の件を報じたBloombergは、独占禁止法違反に関する調査がMetaのマーク・ザッカーバーグCEOがメタバースと呼んでいる「VRやARを利用したデバイスを介してアクセスする没入型のデジタルワールドを構築する計画」に支障をきたす可能性を指摘しています。
また、サードパーティーのVRアプリ開発者は「Metaが市場支配力を利用して、Oculusと競合するゲームやサービスを提供する企業を邪魔している」と不満を漏らしており、時には「Metaが最も有望なアイデアを模倣したり、一部のアプリがプラットフォーム上で適切に動作することを困難にしたりしている」とも主張しています。
実際、Metaの反競争的慣行により衰退した企業の事例として、Bloombergは2019年にOculusプラットフォーム向けにフィットネスアプリをリリースした「Yur」という企業を挙げています。同企業はMeta(当時のFacebook)がVR内でのテクノロジーの動作を妨げるようなソフトウェアアップデートをリリースしたことで、VRフィットネス分野での牽引力を失ったと語っています。その後、Metaがフィットネスアプリの「Oculus Move」をリリースしたことで、Yurのフィットネスアプリは終わりを迎えたとのこと。
別の開発者であるGuy Godin氏は、2019年頃にPCからVRヘッドセットにコンテンツをストリーミングできる仮想デスクトップアプリをOculus向けに開発していたそうです。しかし、Metaから「この機能を削除しなければGodin氏が配信しているアプリを削除する」という通知を受け、仮想デスクトップアプリを削除しなければいけなくなった模様。Metaはその後すぐに同様の機能を備えたOculus Linkをリリースしています。
なお、調査企業のCounterpoint Researchによると、Oculusは2021年第1四半期におけるVRヘッドセットの全世界出荷量の75％を占めており、前年同期比で35％のシェア拡大を果たしています。
https://gigazine.net/news/20220116-meta-oculus-ftc-anti-competitive-practices/
