映画『あのこは貴族』 二人の女性の、束の間の邂逅が背中を押す

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門脇麦演じる東京生まれの榛原華子は、家族に言われるまま、それがごく自然な流れとでもいうように、お見合いを重ねる。そして弁護士・青木幸一郎(高良健吾)と出会い、他の相手に感じていたような違和感ではなく、ほのかな好意を感じ、自然な形で婚約する。それは幸一郎と初めて会って帰るときに華子が、「こんなことってあるんですね」と運命を感じたかのようにほんのりと上気したような顔で言う台詞からもわかる。もうひとつ、二人が自然に婚約できた理由には、お互いの家の階層や利害が一致していたということも大きかっただろう。それは家と家の結婚だったのだ。

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ところが、幸一郎にはずっと交際している──と書くと単純であるが、交流を持っている時岡美紀(水原希子)という女性の存在があった。彼女は富山の封建的な家に生まれ、そんな窮屈な家から出たいという一心で勉強をして幸一郎と同じ名門大学に入る。しかし、ほどなく家業が傾き、学費が払えないせいで中退を余儀なくされる。その後、働いていたキャバクラで大学のときに見かけたことのあった幸一郎と再会し交流が始まるのだった。