ねじり鉢巻きで賃上げを叫んでみても、今や韓国に抜かれた「安い賃金」は大して変わりそうもない。だが、それは商品の値上げを許さず、激安を追い求め続けてきた日本人自らが招いた必然の帰結ともいえるのだ。因果は巡る……。「安いニッポン」の真因に迫る。

・テレビマンが激安企画を連発する理由
 視聴率がいい、一見すると、これらの番組は庶民の生活に寄り添っているように感じるだろう。しかし、実は「安いニッポン」を悪化させて、庶民をさらなる苦境に追いやる罪深い番組ともいえるのだ。

・要は「ケチ」
この「激安」アピールが「負の遺産」としてマックを苦しめ続ける。02年2月に80円に値上げをしたところ「高すぎる」と客が離れて売上高が激減し、半年後に「59円」にまで下げた。そんな「激安バーガー」時代のイメージを引きずる消費者からすれば、100円であっても「割高」なのだ。

・値上げを「不誠実」と感じる国民性
エコノミストや経済評論家の説明では、「日本が円安政策をとってきた弊害」「デフレが悪い」となることが多いが、実は本質的なところでは、我々日本人が他国の人々よりも異常なほど「値上げ」を嫌い、「安さ」を執拗に追い求めているということが大きい。要は「ケチ」なのだ。

・中小企業が低賃金なことが問題
大企業が内部留保を吐き出して賃金に還元したところで、それはたかだか3割の話ということだ。圧倒的大多数が働く中小企業の賃金を上げないと、日本全体の賃金は絶対に上がらない。裏を返せば、日本が30年ほど賃金が上がっていないのは、中小企業の賃金がこの30年上がっていないからなのだ。

・削るところは人件費しかないという実態
「激安グルメ」を愛し、「激安スーパー」を称賛して、「もっと安く!」「もっとお得に!」と値下げに踏み切るよう企業を鼓舞しているが、それがまわりまわって、自分たちの賃金までも「激安」にしてしまっている。給料が上がらないので、消費者は「もっと安いものを」と激安への依存を強める。企業側は「出血受注」を続けていつまでたっても賃上げできないので、労働者(=消費者)はどんどん貧しくなっていく。今の日本人は「安さの無間地獄」ともいえる悪循環の真っ只中にいるのだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b29dbfeca6ce12c1f177c4095bfd13669c62aa81