https://news.yahoo.co.jp/articles/fbfa7ca72591ae28d0875aae4bf40bcb09d50e3d

生きてるうちは「おひとりさま」でも死後は別。天涯孤独か、親族はいるのか。火葬や借金で混乱しないための申し送りを

災害や事故、介護や相続など、人生には不測のトラブルや、避けられない困難が訪れます。とはいえ、気軽に聞ける弁護士や税理士が身近にいるとは限りません。専門的な知識を得ることで、冷静な判断で被害を減らしたり、計画的に備えたりすることができます。ジャーナリストとして長年さまざまな現場を取材しているファイナンシャルプランナーの鬼塚眞子さんに、暮らしに役立つ豆知識を聞きました。第12回は「おひとりさまの死後について」です。
● 「おひとりさま」とはどういうことか
◆実例 「おひとりさま」=天涯孤独ではない
● おひとりさまの死後、起こるトラブル
1. 火葬
◆実例 親族の受け入れがある場合
2. 借金
◆実例 親族の受け入れがない場合
●相続の期限は決まっていない
◆「おひとりさま」とはどういうことか
総務省の調べによると、おひとりさま世帯が増えて、特に65歳以上の単身世帯の増加が顕著です。2040年には単身世帯は約40%に達する見込みだそうです。
「おとりさま」とはどういうことか、〈資産〉を切り口に、資産がある方と無い方に分けて、実例を見ながら検証します。
今回は、資産がないおひとりさまにスポットを当ててみます。
◆実例「おひとりさま」=天涯孤独ではない
高齢のA子さんは「私は〈おひとりさま〉で、身寄りがいないんです」とかかりつけの病院に話していました。実際、A子さんはひとり暮らしで、結婚歴も出産経験もない〈おひとりさま〉でした。
そんなA子さんが手術をすることになり、手術の説明日に中年の女性を伴って病院に現れました。驚いたのは医師の方です。医師は身寄りがいないというA子さんのために、A子さんの手術中やその後にもしものことがあった場合を考えて、病院の社会福祉士や行政の福祉担当者とも連携を取っていたのです。この日も病院内の社会福祉士に同席してもらう手配をして、今後の相談をA子さんとする予定を立てていました。
A子さんが連れてきたのは姪でした。実はA子さんは兄や弟も生存し、甥や姪も複数いたのです。「身寄りがないと言ったじゃないか!」と言う医師に、「世話になることを当てにしていませんから」としれっと答えるA子さん。医師は絶句したといいます。
子どものいない〈おひとりさま〉は、身寄りがないと勘違いをする方が実に多いように感じています。
おひとりさまとは、独身や配偶者との死別・離別を理由にひとりで暮らしている人を意味しますが、天涯孤独は親もきょうだいも親戚など身寄りがまったくない人のことです。つまり、おひとりさま=天涯孤独ではないのです。
A子さんの「親族に頼らない」という気持ちは痛いほど理解できますが、親族がいるのに天涯孤独と申告することは、治療を受ける場合や相続の際には大きな問題となります。
◆おひとりさまの死後、起こるトラブル
1. 火葬
日本には「墓地・埋葬に関する法律」があり、火葬も土葬も同等に扱われていますが、東京や大阪のように条令で火葬を行なうことを決めている自治体もあります。
行政や警察、病院などが、身寄りがないということを鵜呑みにして火葬してしまったり、あるいは病院の独断で医療判断を行なったりすると、後で親族とのトラブルに発展する可能性があります。親族と疎遠だからとか、頼りたくないという感情的なことは関係ないのです。
こうしたことを防ぐために、行政や警察は、死後、徹底して親族を捜し当てます。
◆実例親族の受け入れがある場合
地方の警察から、Bさんの職場に電話がありました。警察に保管されているご遺体は、Bさんの父親だというのです。30年ほど前、Bさんが高校2年生の時に、離婚届けを残して父親は愛人と失踪していました。この一件以来、大学進学を諦めていたBさんでしたが、成績が非常に良かったBさんに同情し、親族が大学の学費を援助してくれることになり、進学を諦めずに済んだのです。卒業後は有名企業に勤務し、Bさんはエリート街道をまっしぐらに進んでいました。
警察は「ご遺体に会われますか?ご遺体はどうされますか?」という答えをBさんに確認するために、戸籍と住民票をたどったのでしょう。
父のことを長年憎んでいたBさんでしたが、結婚し、子どもも当時の自分と同じ年齢になり、会社でも重要なポジションを与えられるようになっていました。すると、許しはしないまでも、以前のような憎しみは次第に薄れていったのです