https://news.yahoo.co.jp/articles/2e9bed2270029e35c0bdec972ccc078c911b7cee

鹿児島県屋久島町で2016年、九州大1年の男子学生(当時19歳)が授業のフィールドワーク中に川で水死した事故があり、両親が九大や引率した担当教授に9145万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は17日、九大に7700万円の支払いを命じた。日景聡裁判長は「救命胴衣など救命具の準備もしないまま入水を指示し、過失は重大だ」と述べた。

 判決などによると、事故は16年9月、自然体験などをする3泊4日の授業初日に起きた。農学研究院の男性教授(現在は退職)は川幅約80メートルの安房川で、希望者に「適当に泳いで」などと指示。川に入った7人のうち2人が溺れ、うち男子学生が行方不明になり、約1時間後に見つかったが死亡が確認された。九大は17年に事故の調査報告書をまとめ、教授を出勤停止3カ月の懲戒処分とし、教授は18年に業務上過失致死罪で屋久島簡裁から罰金50万円の略式命令を受けた。

 判決は、事故が起きた安房川は過去に溺れかけた学生もいたのに、教授が学生の健康状態や遊泳経験などを確認しなかったとして「安全を確保すべき注意義務を怠った。過失は重大だ」と判断した。一方、九大は「公共団体」に該当するとして、職務について公務員個人に賠償を負わせない国家賠償法を適用し、教授の賠償責任は認めなかった。

 判決後、記者会見した学生の父親は「判決が、全国の教育機関の安全管理体制の構築に役立ってほしい」と強調。同席した板井俊介弁護士は「授業中の事故で、大学の過失を全面的に認定した判決は珍しい。画期的だ」と評価した。一方、九大は取材に対し「判決文が手元に届いていないので、コメントは控える」としている。