名古屋出入国在留管理局で昨年3月に死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=の事件を名古屋地検で担当した検事が今年4月、国を相手取った訴訟などを扱う法務省訟務局に異動し、国に損害賠償請求をしているウィシュマさんの遺族側は不信感を募らせている。
法務省は「この検事がウィシュマさんの損害賠償事件を担当することはない」と関連を否定している。

 この検事は昨年3月、ウィシュマさんの死後すぐに捜査を担当。遺体の解剖所見や医師の供述調書なども見られる立場にあった。ウィシュマさんの遺族が同11月、名古屋入管局長らを殺人罪で名古屋地検に刑事告訴した際も担当した。

 ウィシュマさんの遺族は今年3月、ウィシュマさんが亡くなったのは名古屋入管が適切な治療を怠ったためとして、損害賠償を求めて国を提訴。6月8日に名古屋地裁で第1回口頭弁論が予定されている。

 そんな折に、名古屋地検の担当検事が法務省訟務局に異動。ウィシュマさん遺族の代理人を務める駒井知会弁護士は「適正な捜査をしてもらうために検事に告訴状を渡したが、裏切られた気持ちだ。今後、被害者側は、検察にどう相談すればいいのか」と憤る。

 一方、古川禎久法相は17日、閣議後の記者会見で「個別の人事への言及は差し控える」と経緯に触れなかった。
法務省訟務局企画課は「この検事が直接、ウィシュマさんの損害賠償訴訟を担当することはあり得ない。検事には守秘義務が課せられており、安心してほしい」としている。

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