神や仏にそなえた日本酒を消毒用アルコールに――。
奈良市で大安寺など6社寺と酒造会社が10日、「神仏酒合(しんぶつしゅごう)プロジェクト」として、
コロナ下で行事やふるまいの機会が減り、余ってしまった酒を消毒用アルコールにつくり替え始めた。

 プロジェクトは昨夏、大安寺副住職の河野裕韶(ゆうしょう)さん(34)が
八木酒造専務の八木宣樹さん(60)に相談したことから始まった。

 大安寺は青竹の器に入れた酒をふるまう行事を例年1、6月に営むが、コロナ下で中止が続いた。
酒の行き場がなくなった。

 「捨てるのはいやだ」と思った河野さん。2人で頭を悩ませた末、
ウイスキーの工場見学をヒントに、消毒用アルコールへの蒸留に行き着いた。

 蒸留するには400リットルが必要だ。親交のあった氷室神社権禰宜(ごんねぎ)の大宮守雅さん(37)、
般若寺副住職の工藤顕任さん(36)も巻き込み、6社寺で450リットルの日本酒を集めた。

 9日に八木酒造のタンクに酒を投入し、10日午前8時半に蒸留が始まった。
タンクで酒を沸騰させ、管を通って冷えたアルコールの蒸気が滴になり、別のタンクにたまっていく。

 酒は66度の消毒用アルコール52リットルに生まれ変わり、
6社寺のほか、障害者施設や高齢者施設、保育園に設置される予定だ。

 河野さんは「今日の今日までほんまにできるんかと思っていた。形になって感激しました」と話した。

https://www.asahi.com/articles/ASQ6G72SMQ6BPOMB019.html