朝日新聞社は危機に瀕していた。私が特別報道部デスクとして出稿した福島原発事故を巡る「吉田調書」のスクープは、安倍政権やその支持勢力から「誤報」「捏造」と攻撃されていた。政治部出身の木村伊量社長は、
過去の慰安婦報道を誤報と認めたことや、その対応が遅すぎたと
批判する池上彰氏のコラム掲載を社長自ら拒否した問題で、
社内外から激しい批判を浴びていた。「吉田調書」「慰安婦」「池上コラム」の
三点セットで朝日新聞社は創業以来最大の危機に直面していたのである。
特にインターネット上で朝日バッシングは燃え盛っていた。

木村社長は驚くべき対応に出た。2014年9月11日に緊急記者会見し、
自らが矢面に立つ「慰安婦」「池上コラム」ではなく、自らは直接関与していない
「吉田調書」を理由にいきなり辞任を表明したのである。
さらにその場で「吉田調書」のスクープを誤報と断定して取り消し、
関係者を処罰すると宣告したのだ。
https://sn-jp.com/archives/89271