旧統一教会問題 高額献金の実態解明が急務だ
2022/08/11 05:00
 過去に社会問題化した「霊感商法」は今も続いているのか。早急に実態を解明し、違法行為があるのであれば、刑事、民事の両面から厳しく対処する必要がある。

 安倍晋三・元首相が銃撃されて死亡した事件を機に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への批判が噴出している。逮捕された容疑者が動機について、母親が入信して多額の献金をしたこの宗教団体への恨みを供述したためだ。

 これに対し、家庭連合側は10日、記者会見を開き、「2009年以降、社会的、法的に問題のある行為はしないよう徹底している」と反論した。元信者らの民事訴訟は減っており、献金の返金要求にも適切に応えていると強調した。

 旧統一教会は1980年代以降、「先祖のたたり」と不安をあおって高額なつぼや印鑑を売りつける霊感商法などのトラブルが相次いだ。全国霊感商法対策弁護士連絡会は、昨年までの5年間に寄せられた被害相談も564件、計54億円に上るとしている。

 政府は、家庭連合による入信の勧誘や献金集めに問題がないかどうか、真相究明を急がねばならない。警察も情報収集を進め、悪質なケースが確認されれば、捜査に乗り出すことも検討すべきだ。

 銃撃事件で逮捕された男は、母親が総額1億円に上る献金によって破産し、家族が崩壊したと供述しているという。親の宗教活動に苦しむ子どもの問題は「宗教2世問題」と呼ばれる。

 家庭連合側は「返金に応じている」と強弁しているが、そもそも家庭が壊れるほど多額の寄付を集めること自体、容認できない。

 家庭連合側は記者会見で、社会的な批判の高まりに対し、「人権侵害だ」などと述べた。被害者かのような態度を取る前に、自らを顧みて、改めることが先決だ。

 家庭連合と政治家の関係にも注目が集まっている。多くの議員が選挙の際に応援を受けていたためだ。岸田首相は「自ら点検し、厳正に見直すことが前提だ」と述べ、内閣改造の際、入閣を打診した議員に関係を断つよう求めた。

 宗教団体の政治活動は憲法上、問題ないとされている。ただ、家庭連合側に疑念が持たれている以上、当然の対応だろう。

 旧統一教会との関わりを理由に、安倍氏銃撃を肯定するかのような意見が一部にあるのは心配だ。家庭連合への恨みを安倍氏に向けるのは明らかに筋違いであり、いかなる理由があろうと、犯行は断じて許されない。

https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20220810-OYT1T50395/