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歌舞伎俳優 市川寿猿さん 92歳 公演でゴンドラでの宙乗り披露

東京 歌舞伎座で今月行われている歌舞伎の公演で、現役で出演している歌舞伎俳優としては最高齢となる92歳の市川寿猿さんが、ゴンドラでの宙乗りを披露し、話題を呼んでいます。
市川寿猿さんは、1934年に初舞台を踏み、今の市川猿之助さんの曽祖父にあたる初代市川猿翁から直接指導を受けたということで、現役で舞台に出演している歌舞伎俳優としては最高齢となります。

今月、歌舞伎座で行われている「納涼歌舞伎」の公演で、寿猿さんは「東海道中膝栗毛」に街道沿いの店の店長役として出演し、喜多八を演じる市川猿之助さんから、92歳の名物店長として紹介されると、観客から大きな拍手で迎えられました。

そのあと、今度は「鳩の精」となり、役者たちに向かって「あなたたちのおじいさんも、ひいおじいさんも間近で見てきたけれど、もっともっとすごかった。もっともっと精進して、先祖たちが守り伝えてきたこの歌舞伎をずっと後の世までも伝えておくれ」と語りかけました。
そして、ゴンドラに乗って空中につり上げられる「宙乗り」を披露し、大きな歓声に沸く客席に向けて、寿猿さんが笑顔で手をふりました。
寿猿さんは、宙乗りを行ったのは初めてだということで「怖くないかといえばうそになる。ふっと舞台を見たら、猿之助若旦那や幸四郎若旦那、客席の人たちも僕に手を振っている。そしたら怖さが吹っ飛びました。コロナにもならずに、星にもならずに、千秋楽まで頑張ります」と話していました。
「本人がうれしそうなので それがいちばん」市川猿之助さん
市川寿猿さんが宙乗りを披露する「東海道中膝栗毛弥次喜多流離譚」は、歌舞伎俳優の市川猿之助さんが脚本と演出を手がけています。

寿猿さんは、以前は、猿之助さんのおじにあたる二代目市川猿翁の宙乗りを補助する役を務めていたということで、猿之助さんは「寿猿さんは宙乗りの機具をかける方だったので、それを知っているお客さんは驚いたのではないかと思う。本人がうれしそうなので、それがいちばんよかったと思います」と今回の演出について説明しました。

92歳でゴンドラに乗る寿猿さんについて、猿之助さんは「健康でないと役者という商売はできないが、幸い寿猿さんは健康で現役で舞台に立ち、何でも挑戦する意欲を今でも持っているので、お願いした。92歳でも現役で舞台ができるという姿を見て、少しでも観客の力になれば、これほどうれしいことはないと思います」と話していました。
観客「さすが役者さん」「感動しました」
東京 歌舞伎座で市川寿猿さんの宙乗りを見た観客に話を聞きました。

60代の女性は「かごに乗って飛んで行ったのでとても驚きました。心臓が強くないと高いところに行くのは大変だと思うので、さすが役者さんだと思いました」と話していました。

歌舞伎をよく見るという16歳の女子高校生は「『もっと精進しなさい』というセリフが、寿猿さんが言うからこその重みがあって感動しました。ずっと役者の方々を見てきた寿猿さんなので、これからももっと長生きして歌舞伎座の舞台に立ってほしいです」と話していました。

この演目を初めて見たという50代の女性は「すごく声にも張りがあって、しっかり聞こえました。ゴンドラごと飛んでいくのはびっくりしましたが、おもしろい演出で、とてもよかったです」と話していました。