今回ドイツの研究チームが行った実験は、「準備電位」による脳の無意識的決定と、
われわれの意識的な意思決定の関係をより明確にしたものである。
「わたしたちの研究は、初期に現れる準備電位は、のちに自動的な決定に繋がってしまい意識的なコントロールは不可能なのか、
それともわれわれは“拒否”することで決定を覆せるのかに着目したものです」と、
研究を率いたジョン=ディラン・ハインズ教授はリリースにて説明する。
被験者らはコンピューターモニター前に座り、先行する無意識的な準備電位が検出されたあとに、
行動を意識的に中断・拒否できるかを脳電位計測により調査した。この「中断ゲーム」は3つのステージに分けて行われた。
最初のステージでは、まずモニターの中心部にゲームのスタートを知らせる緑のシグナルが現れる。
それから2秒後、ランダムなタイミングでモニターの緑のシグナルは赤へと変わる。
被験者たちは、モニターのシグナルが緑である限り、いつでも足元のボタンを踏んでゲームを中断することができる。
逆に赤のシグナルが現れたときには、ボタンを押すのを止めるように訓練された。足でボタンを押すのは、指先で押すよりも、準備電位の発生をほんの少し遅らせることができるからだ。
このステージでは、被験者らをゲームに慣れさせると同時に、ボタンを押す約0.5秒前に現れる、被験者個人の準備電位が記録された。
ステージ2では、脳波計が被験者の意識的決定前に先行する準備電位を検出し、それを赤のシグナルのタイミングとした。
ステージ1と同様に、ボタンを踏んでゲームを中断できるのは、モニターの中心部が緑の場合だけである。
ここでは準備電位と赤いシグナルがシンクロしており、脳による決定がなされた後でも、赤いシグナルを見た被験者が意識的にボタンを押すのを中断、または、拒否できるかどうかを調べた。