芥川賞作家で福島県三春町・福聚寺住職の玄侑宗久さんに伺う『玄侑宗久の色眼鏡』
霊感があることを装って不安を煽り、不当に高額なものを買わせる「霊感商法」
宗教活動に結びつけられることもあり、玄侑さんは憤りを感じている。

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「どうもこのところ『霊感商法』っていうのが問題になっているみたいなんですけども、いろんな不幸なことが起こるじゃないですか。代表的なのが、家族の誰かが亡くなる、あるいは本人や家族が病気になる、それから貧困ですよね。そういうことろにやってきて、『先祖の因縁でこうなっている』ということをいう人々がいるらしいんですね。
でこの印鑑とか、この壺を買って『お祀りすると、それが好転しますよ』ということのようなんですけども。n代前のご先祖様は2のn乗いると。それだけの数がいるとですね、非業の死を遂げた人もいるかもしれないし、相当悪いことをやった人もいるんじゃないかと思いますけども。

先祖が祟るみたいな話ですよね。
これを宗教関係者が言っているらしいということで、先祖のせいにするとは何事かという憤りを感じるんですよね。お釈迦様という方は『単因論』を嫌ったんですね。無数の過去のうえに我々が今、存在しているということは間違いないんですけども。それが網の目のように過去とつながっているわけですよ。
ですから、今こうである原因というのをひとつに決めることはできない。
で、そういう話は疑ったほうが良いと。

変な宗教というのが世の中にありまして、その方々のね、私が感じる色眼鏡の特徴はですね、『先祖の因縁』を口にする、それから『霊障』という言葉を使う。どっちもね、見えないんですよ。誰も証明できないし、『なんとかしました!』と言われても、それもわからないわけですね。だから、あんまりそういう『先祖の因縁』とか、『霊障』という言葉を使う人々を信用しないほうが良いというふうに思うんですけども。

こういう単因論というのはね、実は、このことの原因がこれだって決めてもらうっていうのは、実は嬉しいんですよ。『あなたが腎臓が悪いのはこういうせいだ』ってひとつ決めてくれるとですね、そこさえすれば良いわけですよ。
毎日たとえば『盛り塩をしなさい』とか、『いわしの頭もおがみなさい』とか、それさえすれば、なんとか改善するんじゃないかと希望が持てますよね。希望を持った途端にだんだん改善していったりするわけですよ。
だからイワシの頭で腎臓が悪いのが治ることもあるわけです。

ありますけども、『腎臓を治すためにはイワシの頭を拝まなければいけません』というのはウソです。
だから、あなたの病気、運命を変えるためには『壺を買わなければ運命が良くならない』というのはウソです。
そこは間違えないで欲しいなと思います。

わたし、高校生の頃から、モルモン教、天理教、それから統一教会、ものみの塔と、あちこちの教会に通ってまして、そこで学んで身につけた色眼鏡です」

https://news.yahoo.co.jp/articles/a950d1aa2316d96520baf87cdf87de97808e5dc0