2020年8月に私立博多高(福岡市東区)の1年生だった侑夏(ゆうな)さん(当時15歳、名字は非公表)が自殺したのは、部活動での不適切な指導が原因だったとして学校側が責任を認め、遺族に謝罪したことが判明した。
侑夏さんの母親(41)と遺族の代理人弁護士が4日、同市内で記者会見を開き、裁判を経ずに学校側と和解したと明らかにした。

https://mainichi.jp/articles/20221104/k00/00m/040/294000c


 遺族側によると、侑夏さんは中学時代から剣道部で活躍し、剣道二段の資格を有していた。博多高の剣道部で顧問を務めていた男性教諭の誘いを受け、20年4月に剣道の特待生として博多高に入学した。

 部の練習は新型コロナウイルスの影響で6月から始まり、3キロのランニング後、素振り1840回、前後に動きながらの跳躍素振り800回などを1時間以内でする内容だった。過酷な練習で侑夏さんは右腕と左足首を痛め、練習についていくのが難しくなった。

 これに対し、別の顧問の男性教諭は侑夏さんに「貴様やる気あるのか」などと暴言を吐くようになった。他にも、必要以上に竹刀で突く▽部員の前で突き倒して転倒させる▽「この野郎」などと怒鳴り声や罵声を30分以上浴びせる――などを続けた。侑夏さんは、男性教諭に足を踏まれて小指の爪がはがれ、両手首には暴行によるものとみられるアザができていた。
 8月29日、侑夏さんは「死ぬために部活休んだ」と自身のツイッターに投稿した後、自ら命を絶った。

 学校側は9月、校長と顧問の男性教諭2人が遺族と面会し謝罪。21年7月には、学校内での災害に見舞金を支給する独立行政法人「日本スポーツ振興センター」が、自殺の原因は「教員による不適切な指導によるもの」と認定し、遺族への見舞金支給を決定した。

 遺族側は22年3月、学校側に損害賠償を求めて提訴する方針を伝えると、学校側は不適切な指導を認め、遺族に改めて謝罪。訴訟外での和解に至った。

 双方の合意内容によると、学校側は男性顧問による不適切な指導が自殺の原因と認め、真摯(しんし)に謝罪。再発防止策として、全教職員を対象にした年1回の研修などを実施する。

 記者会見で母親は侑夏さんについて、手伝いを頼んでも断ることはなく、誕生日にチーズケーキを焼いてくれるなど「優しく温かい子だった」と振り返った。