New門
 [New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「商標」。

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 世の中にあふれる様々な商品やサービスの名称である商標。ほかと区別する役割を果たしているだけでなく、認知度やイメージが高ければそれだけで売り上げ増をもたらすことも期待できる。企業にとって大事なこの知的財産を第三者の勝手な使用から守る仕組みが、商標権だ。

日本のアイホン社 1955年に登録
 「iPhoneの商標は、アイホン株式会社のライセンスにもとづき使用されています」

 国内では9月16日に発売された米アップルのスマートフォンの最新モデル「iPhone(アイフォーン)14」。各国・地域向けにつくられている公式サイトで日本向けにだけ、この断り書きが表示される。

 2008年の日本での初代モデル発売にあたり、アップルは商品名を「アイフォン」にしようとしたとされる。そこに、インターホン製造大手アイホン(名古屋市)が自社製品の名称に似ていると主張した。

 アイホンは、1955年に国内で商標登録済みだった。両社はスマホの日本語名をアイフォーンとし、アイホンがアップルに国内での使用許諾を与えることで合意。アイホンは詳細を明らかにしていないが、連結損益計算書には1.5億円程度を受取ロイヤリティーとして計上している。アップルが使用の対価として支払っているとみられる。

 1969年に誕生し、世界的に売れ続ける独アディダスの名作スニーカー「スーパースター」にも日本企業が関係する。国内では、靴製造のムーンスター(福岡県久留米市)が類似の英語表記「SUPER STAR」の商標権を保有する。

名称を独占使用 出願は早い者勝ち
 商標権の威力は大きい。名称を独占的に使え、使用には対価を受け取ることができる。無断で使用されれば、損害賠償を請求することも可能だ。

 商標権を得るには特許庁に出願する必要がある。日本では、先に手続きした方を原則として優先する「先願主義」が取られている。特許庁商標課の大塚正俊さんは「世界の主流と同じ方式」と説明する。アイホンやムーンスターはこうした「早い者勝ち」ともいえる仕組みを使って、世界的な巨大企業に先んじた。

 商品やサービスを開発・実用化していなくても出願はできるが、何でも登録が認められるわけではない。年間出願数18万~19万件程度のうち2割前後は認められない。似た名称が登録済みだったり、独自性がないと判断されたりするためだ。登録は使用を前提としているので、休眠状態が続けば取り消されることもある。

読売新聞 2022/11/13 05:00
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20221112-OYT1T50174/