「ノースフェイス」だけじゃない!「アークテリクス」爆売れのなぜ
1/7(土) 5:31

 クリスマスを直前に控えた2022年12月中旬の週末。東京・原宿の明治通り沿いにあるカナダのアウトドアブランド、アークテリクス(以下アーク)の旗艦直営店は、若いカップルや男性客でにぎわっていた。ただ、年末商戦のまっただ中にもかかわらず、メンズコーナーに陳列されている商品は目に見えて少なく、なんとも寂しい印象だ。

 「(化繊綿入りアウターの)アトムARフーディーはないんですか?」「シェルのベータLTジャケットがほしいんですけど」
 来店客からの質問に、スタッフたちがあちこちで頭を下げている。「すいません、店頭に出ている商品以外は売れてしまって在庫がないんです。次回の入荷があるかどうかもわからない状況でして……」。

■2022年の国内販売額は過去最高

 こうした風景は直営店だけではない。「ご覧の通り、アークの秋冬物はもうほとんど何も残ってないですよ。ちょっと前までは通の方が好むブランドだったのに、今じゃあノース(ザ・ノース・フェイス)並みの人気ですからね。もともと入荷数自体が少ないブランドですし、若い人たちが買われて、あっという間に売り切れました」。そう話すのは、都内に店舗を構えるアウトドア専門店の販売員だ。
 この専門店では長年にわたってアークの商品を取り扱ってきたが、2年ぐらい前から在庫や入荷の問い合わせ電話が増え始め、2022年はその数が一気に増えたという。「秋冬物が入荷し始める10月以降は、多い日には10件ぐらい問い合わせの電話がかかってきて、その対応だけでも大変でした」。

 アークの国内販売責任者を務めるアメアスポーツジャパンの高木賢・ブランドヘッドは、「とくにこの1、2年で新たなお客さんが非常に増えている」と話す。金額は非公表だが、コロナ影響がまだ残る環境下にもかかわらず、2022年の国内販売額は前年に続いて過去最高を記録した。
 アークは1991年、カナダで誕生した本格派のアウトドアブランド。クライミング用のハーネス(ロープと体をつなぐ安全用具)の製造からスタートし、現在は主に山岳用のウェアやザックを展開。高い品質・機能性と無駄を削ぎ落としたシンプルなデザインが特徴で、山岳ガイドをはじめ、登山やクライミング、大自然の雪山を滑るバックカントリーなどの熱心な愛好家たちから高い支持を集めているブランドだ。

 アークの商品はほかの有名アウトドアブランドと比較しても値段が高い。定番の秋冬用の化繊綿入りジャケットは約4万円、アウトドアフィールドに欠かせないゴアテックスの高機能素材を用いた防風防水シェルは廉価版でも5万円、本格仕様だと8万~12万円もする。

 そんな本格派の高級アウトドアブランドが今、日本で飛ぶように売れている。店頭に並べればすぐに売り切れるほどの人気ぶりで、公式のオンライン通販も多くの商品が完売状態。安価なファストファッションにおされて不振が続くアパレル業界から見れば、なんともうらやましい話だ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/09d493c65027ad4a1f82381e12e88b461923ebf6