「2010年の話です。太平洋戦争の激戦地となった某国の大使から、『相談したいことがあるから来てください』と連絡がありました。
早速、大使館に出かけて話を聞くと、1年半前から右翼団体の男に脅かされている。なんでも、日本が助成金を出しているのに遺骨収集はなかなか進まない。
助成金がきちんと使われていないのではないかと、いちゃもんを付けてきたそうです」

 最初男は、大使館に電話を入れて、大使に会わせろと迫ったという。

「大使館の受付は、『ご用件はなんでしょう?』と問うと、男は『オメエなんかに言う必要はねえ』とすごんだそうです。この時は、大使には会わせなかったそうです」

 その後、何度も右翼の男からと思われる無言電話や恫喝めいた電話があったという。
「ある時、男から電話があり、また大使と面会したいと言われました。受付が『ちょっと待ってください』と言うとすぐ電話を切ると、大使館に押しかけて来たそうです。
受付が『アポのない方は面会できません』と言うと、『さっきオマエ、大使に会わせろと言うとはいと言ったじゃないか。交通費と時間、どうしてくれるんじゃあ』とすごんだそうです」

再三の脅しに屈して、大使も面会せざるを得なくなった。

「彼は大使に対して『遺骨収集をちゃんとやらんと、大使館に街宣車を繰り出すぞ。誠意を見せろ』と言ったそうです。
この時、男は金銭を要求した可能性がありますが、大使は頑なに、お金は払っていないと否定していました」

右翼の男は、世田谷にあった大使公邸にも押しかけた。
「彼は大使に『またお会いできましたね』と、不吉な笑みを浮かべていたそうです。大使もいよいよ困って、私に連絡してきたのです。そこで私は次に男が大使館に来る日を聞き出しました」

当日、勝丸氏は所轄署の警官や公安第3課の右翼担当の捜査員を伴って大使館に出向いた。
「男は、我々を見て、大使館の職員に『なんだオマエ、警察が同席するなんて聞いてないぞ』と食ってかかりました。
そこで私が『話すことがあるなら、俺たちの前で話せ』と言ってやりました。すると彼は、『今日は挨拶だけだ』と」

 勝丸氏は、大使を交えて男と雑談した。

「彼は『俺は日本のため、亡くなった兵隊さんのためにやっているんだ』と主張していました。大使館を出た後、男に『オマエ、ちょっと警察署に来いや』と言って任意で連行しました」
男は抵抗せず、大人しく所轄署に行ったという。
『オマエもう止めろ。これ以上やると、大使に被害届を出させてしょっぴくぞ』と言うと、黙って帰っていきました。彼を逮捕しなかったのは、大使が被害届を出さなかったからです」
右翼の男を撃退したことが他の大使館にも知れ渡った。
「すると、『うちも右翼から脅かされている』という相談が3件ありました。話を聞くと、日本兵の遺骨収集を巡って脅されたというのです。手口もまったく同じ。同じ人物の仕業でしょう」


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