【Colabo事件④】引き続き、監査結果報告書に関する補足のようなもの(その3)及び再調査による影響の推測
地方の会計屋
2023年1月16日 03:25
https://note.com/the_metal_cpa/n/ne92e0a27cbe2#6b8e85ec-c290-4ee0-ac14-bb80fe955840

結局「不正」は事実だったのか?
実際にColabo側において暇空氏が主張していたような「不正」があるのかどうかについても、監査結果報告書の解釈が分かれているところもあります。

上記はあくまで監査結果を要約したものに過ぎませんが、ご覧のようにある箇所では監査請求について「理由がない」と言いながら別の箇所で「理由がある」とも書いているので、これが解釈をややこしくしていると考えられます。

しかしこれも注意深く読むと、

監査請求人(暇空氏)の主張は「一部を除き」妥当ではない。

都に損害をもたらしていないので、暇空氏の主張には理由がない。

しかし、会計については「不当な」「妥当性を欠く」(人件費の計上誤り、領収書の不備など)ものがある。

その限り(=上記3.)では暇空氏の主張には理由がある。

と整理することができます。

結局のところ、少なくとも暇空氏が主張していたような不正行為の証拠は見つからないし、実際に監査結果報告書PP.18~21にかけて実際に(不正ではないが)エラーの見つかった人件費及び通信運搬費を除く12項目についてことごとく「請求人の主張は妥当ではない」と明確に否定しています。
ただ、監査の結果人件費の計上誤りなどのエラーも発見されたので、「その限りでは」監査請求は決して無理筋ではないとフォローしたものと部分的に肯定しています。

また、監査用語においては「不正」は「虚偽表示の原因となる意図的な誤り」と定義されており、一連の記事もこの前提で書いています。その一方で、SNS上での議論でも「不正」の定義にもそもそも意図的なものかどうかの概念があったり無かったりすることがたまにあったりしますが、監査結果報告書を読む限り少なくとも意図的な不正行為があったことを裏付ける記載は見当たりません。

これも実務経験に基づく話ですが、行政機関の文書は基本的に解釈の分かれるような曖昧な表現を用いず、できるだけ白か黒かを明確にする傾向があります。
語弊を招くような曖昧な表現だと、文書の受け手が解釈を勘違いしてしまい、手続きにトラブルが生じたりしかねないからです。
したがって、実際にColabo側に意図的な不正行為だという確証を得たのなら「○○は不正の可能性が高く、請求人の主張は妥当」といった風によりストレートに表現していたのではないかと推測されますし、わざわざ「不当」という表現を用いたのも「不正」と区別する意図があったと解釈するのが自然ではないでしょうか。

以上より、監査手続や監査委員の利害関係といった前提の問題が無い限り、少なくとも意図的な不正行為の証拠は見つからなかったと解釈するのが妥当であり、再調査によって新たに不正の証拠が明らかになる可能性も極めて低いと考えます。